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変身/カフカ

2009.02.24 - 文学作品

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カフカの『変身』を読みました。

なんていうか、不思議すぎる!しっくりこないというか。


そもそも、朝起きて、自分が巨大な虫になってて、どうして、その理由を自問しないのかが謎。
(家族もだけど!)

何か、神によって裁きを受けるようなことをしただろうかとか、そういう発想はなく、虫に変身したために朝出勤できなかったが、周囲の人が自分の様子をみて、驚いたら、出勤できなかったことは、至極当然だと考えるだろうとか、全く驚かなかったら、次の汽車ででていけばいいのだ。って、心配するところちゃうやろー

一生このままなのか!?人間に戻れないの!?!?って焦ったり、絶望したりしないことを考えると、

この「変身」は案外、願ったりかなったりじゃないのかって思わざるを得ない。

主人公のグレーゴルは、今の仕事(外交販売員)は束縛が大きく、いつか自由な身になってやると考えていることからも考えて、この「変身」はそういった現状(現実ではない)からの逃避という意味合いがあるのではないか。

家族を養わなければならないという強い義務感と、もっと自由になってまともな精神状態をもちたいという感情が、この「変身」に繋がったのではないかと思う。


最後の「解説」を読むと、主人公と父親の関係も、絶対的な父親というイメージが本作品で見られることも指摘されており、様々な解釈があっておもしろい。カフカの人生を知り、他の彼の作品などを読むと、もっと深く、カフカの意図するところがわかるのかもしれない。


ま、別にドイツ文学の研究者になるわけでないのだから、厳密になりすぎてもおもしろくないので、さっきの「変身」=現状からの逃避という、俺の解釈(それが一般的かどうかなのかも知らないが)をもとに、何か考えたことをまとめておく。


グレーゴルはもともと家族思いで、家族のために懸命につくした。そんなグレーゴルを家族は愛した。

しかし、虫になってしまったグレーゴルに、嫌悪と愛の二律背反の感情で家族は揺れ動く。

働けなくなってしまったグレーゴルは、家にお金を入れることはできない上に、収入を得るための苦肉の策として迎え入れた下宿人を追い出してしまう。

家族はこれをきっかけで、我慢の限界に達し、グレーゴルという厄介者をどうにかしなければならないと考えるようになるが、翌日、グレーゴルは死んでしまう。

家族はいくら醜い虫となってしまっても、グレーゴルを愛していた。死んだとわかると家族みんな泣いたのだが、過去は過去と決別し、新たな生活へとささやかな希望を持つのである。


切ない感情を抱かずにはいられない。
グレーゴルに対する、愛と嫌悪の感情の相克も痛々しいほど伝わってくるが、
「変身前」あれほど、尽くした息子・兄は、もはや稼ぐこともなく、家族に害を及ぼすだけになってしまったことで、嫌悪が愛に勝り、見捨てられることになる。

結局、家族であっても、なんらかのプラスの役割(機能)を果たさなくなれば、そのかけがえになさは、死でもってしか再び、立ち現れてこないのであろうか。

つまるところ、人間は「孤独」なのである。


別の観点から。


仮に外交販売員という仕事という現状からの逃避願望が体現化して(中島敦の『山月記』みたく)、「虫」に「変身」したとしても、結局、家族をさらさら捨てる気にはない主人公は家族というひとつの呪縛からは解放されないわけ。

普段、こんな日常生活おもしろくないなー。もっと自由にならないかなー。いっそ部屋の隅においてあるクマのぬいぐるみにでもなれなたらなー楽やろーなーなんて、高校のときによく妄想したがが、

また、将来、自分の思うどおりに、何のしがらみもなく、自由に生きたいなーなんて考えたりするけど、

その妄想は、自分の周りにいる人たち、とりわけ家族の存在を想起することでいかにして容易く自分を現実に引き戻すか、それは誰しも経験があることだろうと思う。

自由になりたい、家族を幸せにしたいという相反する願望のうち、前者の実現のみが、調整されることなく無配慮に、押し付けられたとしたら、それは『変身』の筋書きになるのではないか。

虫になった主人公が感覚が人間離れしていく様子が示唆的である。

人間は、社会的存在の拘束性からは、逃れられず、拘束されている限りにおいて、人間の感覚を保持できるのであろう。



つまり、人間は、究極的に「自由」になれず、「孤独」な存在だということである。

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いちひろ
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1988/02/01
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大学生
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読書、バックパッカー、水泳
自己紹介:
三重県鈴鹿市生まれ。

小中高生の時期を大阪府で過ごす。

現在は京都府在住。

ラテンの血を引く。専ら、沖縄出身とか東南アジア出身者とかと間違われる。
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