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ガリヴァー旅行/スウィフト

2009.02.22 - 文学作品
『ガリヴァー旅行記』(中村好夫訳のやつ)読みました。

俺自身、バックパッカーで色んな国に行くのが好きなので、空想であるとはいえ、旅行譚には興味があったので、読みました。

「小人の国」と「大人の国」は、当時の英国の風刺も交えつつも、ファンタジー的要素が強くて、おもしろいです。

しかし、「ラピュタ島」から調子が変わっていき、「フウイヌム国」では徹底した厭人主義で、本作品に対するイメージがかなり覆されました。


小島「グラブダブドリッブ」では、魔法使いに過去の偉人たちを呼び出してもらい、対話をするのであるが、この場面が一番、おもしろくおもった。英雄の輝かしい功績が臆病の故の偶然であったなどの暴露や、時代の異なる大学者を話し合わせようとするなど、実におもしろい。


また次に「ラグナグ王国」では、不死人間が存在し、ガリヴァーはもし自分が不死だったら、長年にわたって蓄積された膨大な知識を活かし、国に貢献したいなどと妄想をするのであるが、そこにいた不死人間は、80を過ぎると理性を持った人間として認めてもらえず、契約を交わすなどのいっさいの法的な権利は剥奪されてしまう。老化とそれに伴う痴呆は人間を蝕み、周囲から厄介者扱いにされる。ガリヴァーの抱く妄想は、人間だれしもが不死ならばと思い描くであろうものであり共感できるのだが、死は人間にとって救済なのだとガリヴァーと共に思い知らされるのである。


最後の「フウイヌム国」で、一切の私情によらず、透徹した合理的思考にもとづいて行動する洗練された「フウイヌム」(馬)の治める国を訪問する。

彼らを理想化し、人間に似た身体的特徴をもち、醜い狡猾さをもつ「ヤフー」と人間の共通点を挙げ、人間のもつであろう醜さに絶望していく。

帰国後も、家族とともに食事することもなく、妻の体臭よりも、馬の臭いを好むなど、狂人じみた生活を送るようになるのだ。

最終章は読んでて、実に気分が悪くなる。最終的に、人間は凄まじく醜いものとして描かれた「ヤフー」以下として描かれるのである。

自分にも厭世的なところは大いに認められるが、ここまで徹底的にはなれないし、作者スウィフトの生涯を見れば、それがうなずける。本人が人間の汚さを持った野心家で、しかし、それを凌ぐ汚さを持った人間に打ち負かされた結果、自分も含めた人間全般を厭うようになったのであろう。


それにしても、後味の悪い作品だけれども、一級の風刺文学としてその座に君臨し続けるのは頷ける。
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 プロフィール 
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いちひろ
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37
性別:
男性
誕生日:
1988/02/01
職業:
大学生
趣味:
読書、バックパッカー、水泳
自己紹介:
三重県鈴鹿市生まれ。

小中高生の時期を大阪府で過ごす。

現在は京都府在住。

ラテンの血を引く。専ら、沖縄出身とか東南アジア出身者とかと間違われる。
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